カンタボンの結婚式
1994-11-14
元気ですか。前回の手紙に書いたベトナム人の一座は、5日間ほどいて、次の町に移っていきました。いつまでやっているのかという情報があいまいで、結局チャンディーは見逃してしまい、とても残念そうでした。 先週の火・水曜日に、日本のJOCV本部から派遣課長がやって来ました。ヴィエンチャンからSIさんと、入れ替わりにSAさんも来ましたが二人ともラオ語は分からないので、誰かが接待役をやらなくてはいけません。結局そういう役は私ということになることが多いのです。おかげで朝早く起きる癖がつき、今は助かっています。 課長は昔ながらの協力隊員といった感じの、良い人でしたが、うちの職場に来た時に、「田舎を回って診療する計画があるなら、JOCVもお手伝いします」などと言って帰ったので、その後うちの所長が車を欲しがって困ってしまいました。 現在JOCVは、あまり車の援助をしたがらないと聞いています。車を援助しても、ただ所長の自家用になるだけ、本来の目的に使われないケースが多かったからだとも聞いています。(その可能性は多いにあります) 車のことも、所長が直接私に言えば良いのに、パンシーを通して言うので(職務上は私の直接の上司ということになっています)、パンシーは中間管理職の大変さをたっぷり味わい、かわいそうでした。所長からは車が欲しいと言われ、私からは車を援助してもらうのは難しいと言われるので、所長になんと言って良いのか分からなかったようです。 実際のところ、車が必要なのは確かです。今地方回りをしているのは、スパサイとカンタボンですが、バイクで200kmくらい走り、そこからさらに歩いて行ったりする村へ行くのです。そのための疲れのせいもあり、帰ると必ずマラリアになってしまいます。もし車があれば、よっぽど楽なのではないかと思います。 今うちの課に車がまったくないわけではありません。AITのニック、UNのカセムさんは、それぞれ車を持っています。でも2人とも魚の養殖の仕事で来ているのですから、獣医のほうで使うわけにはいきません。 不安に思うのは、今実際うちの所長がAITの車を、まるで自分の物のように使っていることです。もしかすると、今からAITが引き上げた時のことを考えて、車が欲しいと言っているのかもしれません。援助の申請書を書いてみるかどうか、とても迷っています。 そんなことをしている間にも、辞書作りのほうは少しずつ進んでいます。結局100ページくらいになりそうです。自費出版と思っていたのですが、とても厚いものになり結構お金もかかりそうなので、事務所にお願いしようかどうか迷っています。 『メコン』の方も、少しずつ進んでいます。木曜日には、ベトナム料理屋のおばちゃんのインタビューに行きました。地元の名物料理屋のおばちゃんにインタビューしたら面白いのではないかと思いつき、1人では翻訳に不安があるので4人で行き、色々と聞いてきました。この内容は、来年早々に出来上がる予定の『メコン』に載せます。できたら送りますので、お楽しみに。 さて、先週の出来事のメインは、なんと言っても昨日行われたカンタボンの結婚式でしょう。なんだか身内の人間が結婚するような気になり、お祝いをはずんでしまいました。(普通500キープ=100円のところ、500バーツ=2000円入れ、ウイスキーも1本買っていきました)写真を撮ったので、そのうち送ります。 結婚した相手は、学校の同級生で、彼女も獣医です。でも、職場が田舎の方なので、毎日バスで1時間かけて通うのだそうです。そのバス代だけで大変だと言っていました。 ラオスでも、結婚するためにはお金が必要です。男の方は、相手の家にお金や物を送り、最終的には相手のお母さんが承知しなければ結婚できないのです。そのためには300ドルくらい掛かるそうです。カンタボンは、150ドルくらいしか貯金がないと言ってあせっていたのですが、何とかなったようです。 結婚式の方にまで出て、バーシーをしてきました。(招待客は家の前で宴会をやり、家の2階で親戚が集まってやるのです)2人は奥さんの実家に住むことになります。こちらでは普通そうなのです。 ところで残念なことがひとつあります。今度パクセーのM君と、バイクを交換することになったのです。今私の乗っているバイクはオフロード用といって、山道などを走るためのものです。今この型のバイクは、ラオスの協力隊全体で3台しかありません。M君は山に行く仕事、私は街中での仕事なので、取り替えてもらえないかと頼まれてしまい、嫌だとは言えなかったのです。 慣れ親しんでいたバイクなので、とても残念です。なんだか娘を嫁に出すような気分です。来月チャンディーが帰国するので、私はチャンディーの乗っていたカブ(日本で、おそば屋さんの出前の人が乗っているようなバイク)に乗ることになります。 と、ここまで書いた所で仕事が入りました。センサバイの向かいの家で飼っている子犬の往診です。昨日の夜、大きな犬に噛まれショック状態だったのですが、すっかり元気になっていました。「料金は?」と聞かれ、「いいよ、いいよ」と言って帰る背中に「ありがとう」の言葉…。こういう時、つくづくこの仕事をしていて良かったと思ってしまいます。 気分の良いところで、今回は終わりにします。 来月の始めには、また半年に1回の健康診断でヴィエンチャンに行きます。ついこの前行ったばかりのような気がするのに、時の経つのは早いものです。 それではまた、お元気で。 |