ラオスのモーターショー?

1994-08-08

 元気ですか。今年、日本の夏は暑いと聞きましたが、大丈夫ですか。こちらは、先週毎日かなりまとまった雨が降り、もう少しでメコン川の水が溢れそうで、ビクビクしていました。川の中州は、完全に水没し、岸から川面まで1mもないくらいまで増水したのです。万一に備えて、水や食糧も多少買い込んでいたのですが、少しずつ水量も減ってきたようで、この分なら多分大丈夫です。

 山の木をたくさん切ってしまったせいかどうかは分かりませんが、一度どっと雨が降ると、平気で1mくらいは水面が上昇するので、まだまだ安心はできません。

 昨年は水不足で困っていたのに、今年は雨量が多いようです。曇り空が続くため、気温はあまり上がりません。同僚のラオ人は、ジャンパーを着込んだりしています。空が曇っているので、なんだかどんよりとしていますが、暑い日本に申し訳ないほど涼しい過ごし易い気候です。

 普段は部屋に食べ物がほとんどないので、大丈夫だったのですが、食料を置いたとたんに、アリが部屋に入ってくるようになりました。どうして分かるのか、不思議です。日本のアリと違って、こちらのアリは人を噛むのです。本当に始末におえない奴らです。最近、蚊が少ないので助かるなと思っていたら、今度はアリです。アリに噛まれると。蚊に刺されたときより痒く、腫れてしまいます。間違ってベッドに入り込む奴もいるので、困ってしまいます。

 困った時には、現地の人を見習うのが一番です。普段から悩まされているだけあって、ちゃんと対抗する手段を知っているからです。

 食べ物にたかるアリを防ぐには、水を利用するのが一番です。こちらに着いたばかりのころ、お店屋さんの机の脚に水のたまった皿が敷いてあり、不思議に思っていたのですが、あれは机に登ってくるアリを防ぐための生活の知恵だったのです。私もさっそく見習って、皿に水を張り、そこに空き缶を立て、さらにその上に皿を置き、その皿の上に食料を置きました。

 次に、部屋に入ってくるアリをどうにかしなければいけませんが、これには強い味方がいました。お店に行くと、ちゃんとアリチョーク(別名ゴキブリチョーク)という中国製のチョークが売っているのです。以前アリの行列が部屋を横切ったときにもお世話になりましたが、このチョークの効果は抜群です。

 使い方は簡単、このチョークで床に線を引けば良いのです。一体このチョークが何でできているのか分かりませんが、このチョークで線を引くと、アリはその線を越えられなくなってしまうのです。

 アリの周りに、このチョークで丸く線を書くと、線を越えられないアリは円の中でうろうろするだけです。もちろんチョークですから、線を引いても、粉の厚い所と薄い所ができ、最後にはアリも粉の薄い所を強行突破して、円の外に出てしまいます。でも、嫌がっているのは確かです。

 まず、アリをじっくりと観察し、アリの通り道を探します。どこから来るのか分かれば、しめたものです。たいていは、ベランダ側の扉の隙間から来ますから、そのあたりを囲むようにチョークで線を引けば良いのです。本当に嘘のようにアリが入って来なくなります。

 このチョークはゴキブリにも効くそうです。確かに箱にはゴキブリの絵が書いてあります。私はゴキブリには使った事はありませんが、ゴキブリに効くというのは嘘ではないかと密かに思っています。だって、ゴキブリは空を飛べるのですから、飛んでチョークの線を越えられると思うからです。もっとも、こちらの人たちは、ゴキブリはあまり気にしないようです。ゴキブリは人を噛まないから良いのだそうです。

 日本では嫌われ者のゴキブリが、こちらではそう嫌われておらず、日本では、さほど害のないアリが嫌われているのですから面白いものです。でもそのアリさえ、こちらの人は生で食べたりするのですから、このアリとの勝負は、ここラオスにおいては人間の勝ちと言って良いのかもしれません。

 最近涼しくて気候が良いせいか、仕事はまったく暇です。こうして職場で手紙を書いていられるのですから、のんきなものです。

 少し、先週あったことを書いておきましょう。水曜日には、 帰路変更旅行でベトナムとカンボジアを回ってきた、Cちゃんがやって来て、1泊していきました。旅行の邪魔になる荷物を置いていったので、それをとりに来たのですが、バンコクから夜行バスで10時間かけて来て、またバンコクまで戻り、帰国したのですから、元気な奴です。

 盛大な見送りを受けてサバナケットを後にしただけに、まだ日本に帰らずまた来た事がばれると恥ずかしいと言って、こそこそしていたのですが、何人かの知り合いに会ってしまい、「帰ってきたのか!」などと声をかけられていました。

 Cちゃんの話では、ベトナムもカンボジアも町の感じはラオスとあまり変わりないと言っていました。さすがに、アンコールワットは見る価値があったとも言っていました。私も任期が終わったら、アンコールワットを見て帰るのも良いかなと思ってしまいました。

 6日にはS君が、明後日にはMさんが3週間の任国外旅行(2年間に1回だけ、任国の近隣国に3週間旅行できる制度)に出発します。S君は長期滞在思考、日本でも北海道に半年、沖縄に半年という生活をしていた人ですから、バンコクからすぐインドネシアの島に渡り、そこでのんびりするそうです。

 Mさんは本当なら7月31日に奥さんと子供が日本から来て、サバナケットで1週間過ごし、その後一緒に旅行へ行くはずだったのですが、来る前日に子供が病気になってしまい、かわいそうなことに計画がだめになってしまったのです。結局旅行は一人で行くことになり、9月頃あらためて家族を呼ぶことになりました。「ラオスに来てから病気にならなくて良かった」と、自分を納得させていました。大変楽しみにしていたのに、かわいそうでした。

 Mさんに比べれば、私の場合半年に一回はうちの奥さんと会っているのですから幸せなのでしょう。こんな所までやって来てくれたのですから、ありがたいものです。もし、2年間に1回も会えないなんて事だったら、やっていけないかもしれません。

 少し前までは、協力隊に参加したために離婚というケースが多く、そのために家族呼び寄せ制度(協力隊は、単身赴任が原則。2年間の任期中一回だけ、妻子を呼ぶことができる制度)というものができたと聞いています。うちの奥さんとは、13日にバンコクで会い、一緒に3週間旅行する予定です。今から楽しみにしています。

 それまでの間にやらなければいけないことも結構あります。『メコン』も作ってしまわなければなりませんし(試作版もでき、後は原稿待ちです)、以前からやっている辞書作りのほうも目鼻をつけたいと思っています。12月にはシェンカンとパクセーに新隊員として獣医隊員も来るそうです。できれば、その人たちが来る前に辞書を完成させたいと思っています。

 やることはやってから旅行という方が気持ち良いので、少しがんばってみようと思っています。

それではまた、お元気で

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