サバナケット唯一の救急車?

1994-06-05

 元気ですか。この1週間は、看病で明け暮れてしまいました。私と同期のS君がマラリアになり、入院していたのです。前の手紙に、彼が熱を出したという話を書いたと思いますが、手紙を書いたときには下がっていた熱が、翌日月曜日にまたぶり返し、どうもおかしいので、病院の検査室でMさん(臨床検査技師)が検査したらマラリアだったのです。

 さっそく病院に入院し、キニーネ入りの点滴を開始しました。ヴィエンチャンの事務所にも連絡をとり、翌日火曜にはメディカルコーディネーターのSIさんがやって来ました。初めはS君をヴィエンチャンまで運ぶ事も考えましたが、39度以上の熱が続いている状態で運ぶより、こちらで治療したほうが良いだろうという事になりました。

 こちらの病院は、完全看護なんて事は無く、食事の心配、シーツの取替え、点滴の管理、全てこちらでやらなくてはいけません。助産婦のSさんを中心に、Mさん、私などが交代で付き添う事になりました。こういう時に看護婦さんがいるというのは心強いもので、Sさんの指示であっという間に入院の準備が整いました。

 水曜には熱も下がり、規定の4本の点滴も終わり、まだ血液中にはマラリア原虫がいるけど一応退院し、後は飲み薬で治療する事になりました。

 しかしその夜、また熱が上がり、大事をとって再入院しました。今度は、点滴管理はありませんから、全員体制で看病にあたる事になり、1日1人4・5時間ずつ付き添う事になりました。

 協力隊というのは、たいしたものだと思うのはこういう時です。ちゃんと一人一芸というか得意分野があり、こんな国まで来るくらいですから、基本的に人を助けようという気のある人達です。付き添いのスケジュールにしても、その他の手配にしても、あっという間に決まり誰も文句は言いませんし、スムーズに進行していきます。

 木曜の夜には熱も下がり、暗い気分で看病しても仕方ないし、皆で食事した方がS君も食欲が出るだろうということで、病室にカレーの大鍋と炊飯器、ビールを持ちこみ、ゴザを敷いてカレーパーティーをやりました。

 翌日の金曜にはSIさんはヴィエンチャンに戻り、S君も順調に回復しました。熱も上がらなくなり、血液中のマラリアも消え、昨日の土曜日には退院しました。熱帯性マラリアだったので、死亡率が高い変わりに再発する可能性はないとの事でした。体力もかなり回復し、今日の夕食は外に行く事もできました。

 なんでも経験しておいて損なものは無いようで、私も昔からずいぶん病院での付き添いや泊りをした事があったせいか、今回の付き添いもまったく苦になりませんでした。二晩ほど泊り、一度は点滴が気になって徹夜だったのですが、気が張っているせいか昼間はちゃんと仕事をしていました。病室に運ばれて来る食べ物やお見舞いを、食欲があまり無いS君に代わって食べていたので、この一週間でかえって太ってしまいました。

 S君がマラリアに感染したのは、多分発病の2週間前に行ったクリストファーの村での事でしょうから、私にも危険性があったのですが、潜伏期間の2週間を過ぎてもなんともありませんから、多分大丈夫なのでしょう。一緒に行ったTやTも大丈夫なようです。普段一番丈夫で、蚊にも刺されにくかったS君がマラリアになるとは思いませんでした。この一件で、事務所に届けずに旅行した事がバレてしまいましたが、今のところ別に問題になっていません。

 先々週くらいは、前の手紙に書いたように少し気分が落ち込んでいたのですが、この入院騒ぎのおかげですっかり忘れ、逆に好調になってしまいました。

 S君のお見舞いにボワカムさんもやってきたので、コレ幸いと事務所のSIさんも交えて、今後のサバナケットにおける協力隊について話し合い、翌日県の会議で、これからも協力隊を要請する事に決まりました。S君の入院をきっかけに、私の低調期は終わったようです。

 今週は病院にいた時間がほとんどで、それ意外にあまり話題がありません。少しいつもより短いようですがこれで終わりにします。

 雨期に入り、毎日雨が降ります。一日中降り続けるという事は無いのですが、S君の入院中私は洗濯係だったので洗濯物が乾きにくくて困りました。でも一時のように死ぬほど暑いという事は無く、結構過ごし易い日が続いています。

それではまた、お元気で。

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