近所の犬達

1994-05-13

 元気ですか。前の手紙を出した日の翌日、佑さんから本と手紙が届きました。ALSという病気と闘った青年の本でした。早速本を読ませてもらい、読了後はホテルの共同本棚に収めさせてもらいました。

 だんだん動かなくなる自分の身体と闘いながらも、ワープロを打ち続けるなんて…。なんと表現して良いのか分かりませんが、本当にたいしたものです。でもその反面、自分が生きた証明のような物は、普通一生かかっても残せない人が多いのに、本という形で残すことのできた彼が、少しうらやましい気もしてしまいました。

 さて私はというと、またバタバタとした1週間を送ってしまいました。気づくと1週間が過ぎていたという感じです。どこに出すというわけではないのですが、今度は狂犬病のレポートを地方別にまとめてみたりしていたのです。土・日はその反動もあってボーと過ごしたのですが、火曜日には新隊員のK君が来て、木曜には日本大使夫妻がサバナケットに来たため、この3日間ほどは毎日宴会続きだったのです。

 K君は私より一回り下で、兵庫県出身の24歳。エアコンメーカーからの現職参加。S君と同じ工業学校に派遣されてきました。ところが、今のところ学校には冷凍機器という学科はなく、機材もありませんし、生徒もいません。いったいどうなるのか、他人事ながら心配になってしまいます。でも、そういう状況であるということはK君も承知しており、明るい性格のようですから何とかやっていけるのではないかと思います。センサバイ男子寮もこれで6人。少し人が多すぎる感じになってきました。

 K君と一緒に、事務所のSさんもやって来たのですが、夜4時頃まで飲み、次の日は眠そうに帰っていきました。Sさんは32才。アフリカの協力隊OBです。だからという訳ではないのですが酒好きで、強いのですが、さすがに4時までというのは大変だったようです。ちなみに私は付き合いきれず、先に寝ました。

 次の日の午前中は、助産婦のSさんに手伝ってもらって、犬の避妊手術をしました。ヴィエンチャンではどうか知りませんが、サバナケットでは始めての手術です。いつもバトミントンで行っている中国人学校で飼っている犬なので、もし失敗でもしたらバトミントンに行くたびに気まずい思いをすることになってしまいます。事務所の連中も集まってきて、興味しんしんで見守っています。

 そういうときに限って悪いことというものは起きるようで、開腹してみると卵巣が癒着していて開口部まであがってこないのです。何とか持ってこようとしているうちに、どこからともなく出血し、出血部を捜し止血しているうちに、麻酔が覚めてきて犬が暴れ出してしまったのです。

 幸い手伝ってくれたSさんは、職業柄出血には慣れており、冷静に対処してくれたので、大変助かりました。結局麻酔を追加し、卵巣摘出をあきらめ、子宮を糸で縛って手術を終えることにしました。

 大変不本意な結果になってしまいました。でも、犬も回復して元気にしていますし、この方法でも妊娠することはありません。これはこれで良かったのだと自分自身を無理やり納得させている最中です。

 その日の夜はK君の歓迎パーティー。パクセーのSさんからの援助金の残りを使い、町で一番新しいナンハイホテルに地元のきれいどころ(?)も呼んで、パーっとやることにしました。S君の学校の生徒で、今農林局で実習中の3人娘、イギリス人のニックとその奥さん、パーマ屋軍団のお姉さんたちも呼びました。この日ばかりは、こっちのおごり。中華料理を食べた後は、ディスコに繰り出しました。K君の歓迎会といいながら、自分たちのほうが楽しんだ気もしますが、まあそれも良しとしましょう。

 昨日はヴィエンチャンから、大使夫妻と、大使館のお医者さんS先生がやって来ました。朝の空港へのお出迎えから始まって、午前中は日本の援助で建てた小学校の落成パーティー、午後は35km地点に日本の援助で、日本の建設会社が建設する農業用ダムの鍬入れ式、夜は昨日と同じナンハイホテルで建設会社主催のパーティーと、一日中拘束されてしまいました。建設会社の6人は、これからサバナケットに2年間住むことになります。

 パーティーのために、建設会社の上役の人や、コンサルタント会社の人も来ており、サバナケットでこんなに大勢の日本人が集まるのは始めてでした。日本人のパーティーにつきもののカラオケがあり、10時ごろにはお開きになるはずでしたが、ついつい大使夫人と麻雀をやることになってしまいました。

 大使のWさんは、いつもニコニコしている白髪の紳士。それと対称的にというと失礼ですが、大使夫人はガラガラ声の下町のおばちゃん風で、気さくな感じの人なのです。ラオスに来てすぐの時に大使公邸に招かれ、その時にも夫妻と一緒にカラオケ大会になりました。

 私とS君、それと建設会社代表で一番若いSさん(24才)が大使夫人と別室で卓を囲むことになり、大使は他の人たちと大好きなカラオケをもう少しやることになりました。麻雀の結果は、始めはSさんの調子が良かったのですが、最後には大使夫人の大逆転。私は少し浮き、S君の一人負けでした。これが接待麻雀なら、最高のパターンになってしまいました。

 夫人もご機嫌で、「また明日もやりましょうね」などと誘われたのですが、本気にしてのこのこ行って良いものやらどうやら…、手紙を書きながら考えています。

 今日は、午前中7件の往診があり結構きつかったのですが、午後は暇、手紙を書くこともできました。でもこの後、時間指定で2件の往診がありますので、そろそろ手紙も終わりにしなければいけません。

 それではまた、お元気で。

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