トラックバスで川を渡る。

1994-04-21

 元気ですか。こちらは今年3回目の正月が終わったところです。周りの人も私自身も、まだなんとなく正月気分でボーとしています。今日は往診もなく暇なので久しぶりに職場で手紙を書いています。

 ラオ正月は先週の木曜日からだったのですが、先週の月曜くらいから、もうすでに正月気分で仕事になりませんでした。毎日各隊員の配属先や、いろいろな所でパーティーが開かれました。この国では、パーティーに招かれたというのは、仕事を休む立派な理由になります。

 月曜はAさんの会社、火曜は農業学校、水曜は朝から3軒掛け持ちでパーティーがありました。そのパーティーのたびに、アルコール度50%くらいあるラオラオ(ラオ焼酎)を飲まされることになります。

 こちらのお酒の飲み方は、1人1人グラスを渡されるのではなく、酒瓶と小さなグラスを持った人が一人一人を回り、飲ませていくのです。パーティーともなると、酒瓶を持った人が何人もいますから、大変です。全部飲んでいたら身体が持ちませんから、飲んだふりをして捨てるとか、口に含んで飲んだふりをし、後でこっそりハンカチに含ませるなど、ごまかしのテクニックもうまくなってきます。

 普段のパーティーなら回ってくるのはお酒だけですが、ピーマイですから水をかけに来る人も次々と回ってきます。食事中はそれでもおとなしく、コップの水を襟首に注ぐくらいなのですが、食事が終わってダンスとなると、もうどこから水をかけられるか分からない大騒ぎです。頭の先からつま先まで全身びしょ濡れになってしまいます。

 水だけならまだ良いのですが、メリケン粉は振り掛けられるは、口紅は塗られるはの大騒ぎ、とても正気ではいられません。

 極めつけは水曜にあった副知事のスカスムさんの自宅でのパーティーでした。スカスムさんの奥さんは病院に勤めていますから、病院関係のおばさんたちが大勢来ていました。そのおばさんたちのお酒の飲み方と言ったら、普通ではありません。ウイスキーのビンを持って回り、1人1人無理に口をこじ開けてでも飲ませていくのです。

 飲むは、食うは、歌うは、踊るはのランチキ騒ぎ。昼前から始まったパーティーは夕方になってもなかなか終わらず、帰ろうとすると門に鍵をかけられ、仕方なくもう1回踊ることになります。やっと脱出できたのは4時過ぎ。びしょ濡れでホテルのたどり着きました。

 次の日の木曜からは本格的なピーマイ。町のあちこちに水を用意した人が待ち構え、通りがかる人はもちろん、バイクや車にも水や粉を振り掛けることになります。

 その騒ぎを逃れて、というわけではないのですが、正月休みを利用してラオス南部へのバス旅行に行ってきました。

 バスといっても、田舎のバスはトラックを改造したトラックバスです。トラックの荷台に座席部分をくっつけたもので、窓にはガラスさえありません。客席の天井は低く、立つとかなり腰を曲げないといけません。席は長イスのようになっており、そこに1列8人も詰め込みます。それでも乗れなくなったら、今度は屋根の上です。屋根の上にも何度か乗りましたが、ほこりはひどいけど、混んでいる車中よりましでした。

 でも、本来は屋根には乗ってはいけないらしく、警察がいる町に近づくと中に乗りなおすか、歩くことになります。これが大変なのです。ただでさえ混んでいる客席にさらに詰め込むのです。窓から入り、座席の背もたれの上に鳥が枝に止まるかのようにしゃがむ人や、座っている人の上に座る人までいる始末です。そんなトラックバスに5日間で1000kmも乗ってきました。

 まずはサバナケットから南へ250kmくらいにあるパクセーへ。これが約6時間。予定ではここですぐバスを乗り換え、西へ150kmくらいにあるサラワンまで行くつもりでしたが、ホコリまみれの未舗装道路6時間というのは思ったよりきつく、パクセーのTの家に泊めてもらう事にしました。

 次の日はまたバスでサラワンへ。150km、約4時間でした。この間の道路はほとんど舗装してあり、とても楽でしたが、バスの混雑ぶりは相変わらずでした。

 サラワンの町自体には特に見る所もないので、約30km引き返した所にあるセーセートの滝までまたバスに乗り、滝のそばにあるバンガローに泊まりました。

 次の日はまたパクセーに引き返し、後から送れて来たチャンディーと合流。次の日はタクシーでワットプーという山寺とパクソン高原を回り、翌日またバスでサバナケットにもどりました。日程を書いただけで疲れるような旅でした。

 最初は、Cチャンとチャンディーと3人で回る予定だったのですが、チャンディーは用事があって遅れることになり、最初の2日間はCチャンと2人。妻ある身で、若い女性と2人で旅行などしても良いのだろうかと思いつつ、Cちゃんもちっとも気にしていないし、周りも心配してくれず結局行くことになりました。よっぽど安全だと思われているのだなと、少し残念な気もしてしまいました。

 結果的にはTの所に泊まり、Tも一緒に行くことになったので、2人で旅行ということはなく、ほっとしたような、残念なようなという結果になりました。Cちゃんは結構気の強い子なので、まるで姫にじいやとお付きの2人みたいな旅になってしまいました。

 サバナケットと違って、パクセーやサラワンは、山があり、高原がありと、変化に富んでいます。高原では、コーヒーや高原野菜が作られており、市場にはナスまで並んでいました。

 日本は桜の季節でしょうが、こちらではチャンパーという名の白い花が咲いており、とても印象的でした。

 それではまた、お元気で。

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