事務所の机にビニールを敷いて,犬の手術

1994-01-20

 元気ですか。今日はワンタハーン(軍隊の日)。ラオスの祭日で、休みです。…と思い、昼過ぎまで寝ていたのですが、完全な勘違い。起きてみたら、他の人は皆仕事に行っていました。どうやら休みだったのは、学校関係だけだったようです。

 なぜか、以前と違って、12月の始めから毎日必ず1件は仕事があるという記録を更新中でした。でも今は継続治療中の動物はいませんし、何か手におえない事があれば、カンタボンかスパサイが呼びに来るでしょうから、休む事にしました。

 去年の11月頃まではあまり犬を連れてくる人はいなかったのですが、12月の始め頃から、やたら犬の治療ばかりしています。飼い主は農林局の職員や、その知り合いばかりですから、きっと誰かが営業しているのでしょう。

 犬の治療なら慣れたもので、水牛やシカを治療しろといわれるよりは良いのですが、治療したくても器具や薬がないことも多く、なかなか日本でやっていた通りという訳にはいきません。それでも、犬用に小さい注射器も買ってもらいましたし、薬の方も持ってきた薬や、協力隊でもらった人間用の薬を工夫しながら使っています。

 先週の木曜に機構改革会議があり、獣医課の責任者は、なぜか事務長のパンシーになり、部屋も養殖課の部屋と交換して、広くなりました。今回なぜか、公務員の給料が今までの2倍になることになり、皆張りきっているのです。財源が増えたのではなく、単にお札を増刷するだけらしいので、インフレになることは充分考えられます。現に、すでに少しずつ物の値段が上がり始めているように感じます。

 結局得をするのは外貨を溜め込んでいるお金持ちばかり、という気がしますが、市場が活発になり、給料が上がり、仕事にやる気を出してくれるのは良い事です。パンシーやドンチャイも、鉗子や注射器など今まで家に個人的に持っていた器具を、職場に持って来たりしています。そんなものがあるなら、前の手術の時に持ってきてくれれば良かったのになどとも思ってしまいます。

 以前の部屋では、四つの机がバラバラに位置していたので、皆が雑談を始めても適当に付き合って、後は手紙を書いていられたのですが、今度は一番奥にパンシーが陣取り、ドンチャイ、私、スパサイ、スリニャ-(事務の女性)の順で並んでおり、皆が無駄話をし始めると、嫌でも挟まれてしまいます。落ち着いて、手紙も書けなくなってしまいました。

 もっとも、職場で手紙を書く暇もなくなってきました。スパサイもやっと日本に行く気になってきたらしく、日本語の勉強を始めたのです。仕事が暇な時には、彼に日本語を教えなければいけませんし、カンタボンの奴も、少しは仕事が出来るようにしなければいけません。

 今からスパサイに日本語を教え、試験は9月。日本に行けるのは来年の6月くらいでしょうから、その頃には私は帰国しているはずです。今うちの課の状態で私が帰り、スパサイも日本に行ったら、動物の治療が出来る人間はいなくなってしまいます。(ワクチンくらいなら出来るでしょうが)カンタボンに直接教えようとするのですが、奴も遊びたい盛り。少し難しい話を始めると、スーといなくなってしまいます。

 やはり、4月くらいから農学校に週1・2回教えに行き、その時に奴を通訳として連れて行こうと思っています。(カンタボンにもプライドがあり、後輩もいるので、生徒というわけにはいきません)

 4月から農学校で教え始めて、その傍らスパサイには日本語を教え、9月にスパサイが試験に合格したのを見届けてから3週間の任郊外旅行。来年の4月に任期が終わり、帰路変更旅行後帰国。6月にはスパサイの来日を出迎える…と、勝手に計画を立てているのですが、さて、どうなりますやら。でも、スパサイにとっても、カンタボンにとっても、ひとつのチャンスだと思うので、ぜひうまくいってもらいたいものだと思います。

《この計画はもろくも崩れ、サバナケットの農学校はなくなり、スパサイにもあまり日本語を教える事は出来ませんでした。私の後任の人のおかげで、 昨年、スパサイは日本に来る事が出来ました》

 ところで今サバナケットに、Bさんという75才のシルバーボランティアの人が来ています。Sさんの知り合いのお金持ち、ブントンさんが縫製工場をやることになり、その指導のため45日間ブントンさんの家に滞在する事になったのです。

 始めブントンさんは、シンガポールの会社と合弁で会社をやるはずだったのですが、そこは世間知らずのラオ人の事、見事にだまされてしまったそうです。世界銀行で借りたお金で、古い型のミシンを必要以上に買わされ、文句を言おうにも、相手に逃げられてしまったそうです。

 そんな時、タイのテレビで日本のシルバーボランティアの事を知り、Sさんを通してBさんがやって来たのです。素人目には、どうやって事態を打開すれば良いのか分かりませんが、さすが専門家というのは大したもので、45日で何とかしてみせると言っていました。縫製の中では、ワイシャツというのが一番難しく、しかも需要があるもので、ワイシャツさえちゃんと作れれば、世界中から買いにくるものなのだそうです。

 Bさんは英語の通訳は連れて来たものの、日本語も話したいらしく、日曜ごとに2・3人ずつ遊びに来てくれと、ブントンさんに頼まれてしまいました。私も、今度の日曜あたり、行ってみようと思っています。

 ところで、また悲しい事がありました。毎日お昼を食べに行っている、カオピヤック屋に遊びに来ていた、犬のバーディが土曜日に車にはねられて死んだのです。私にとてもなついており、私のバイクの音を聞きつけ、いつ行ってもどこからともなくやって来て、カオピヤックの中の肉をねだっていました。毛は少し長め、小柄で白に黒いブチがあるオス犬でした。

 このところ姿を見なかったので、どうしたのか聞くと「タイレーオ(死んじゃった)」と軽く言われてしまいました。死体は、飼い主である向かいの家の人が食べてしまったそうです。まったく、いくら食習慣の違いとはいえ、この国の人たちは人に悲しがる隙を与えてくれないので困ります。

 さて、6ヶ月に1回の、健康診断と隊員総会がまたあります。6日にはヴィエンチャンに行って、獣医課などに顔を出し、31日から2月4日までは総会と健康診断。5・6・7日とヴィエンチャンのひとつ南の県、ボリカムサイ県のパクソンに、チャンディーとCちゃんと遊びに行き、2月9日くらいにサバナケットに戻る予定です。タイのウドンタニ-に行くのは2月1・2日。1日の夜には電話をしてみるつもりです。もし電話がなかったら、2日の朝9時半くらいまでは部屋にいると思いますので、電話してみてください。ラオスと違って、ちゃんとつながると思います。

 電話は、CHRON HOTEL   TEL 042-24-×××× です。

 たぶんS君と2人部屋です。1日の夜は、ディスコなどに行く予定ですので、電話をくれてもいないと思います。

 それではまた、お元気で。

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