ラオスの犬は短足が多い。
地元の人はマーニープン(日本犬)と呼びます。失礼ですね。
1993-11-10
元気ですか。日本はもう寒いのではないかと思います。こちらも季節の変わり目という感じで、昼間は半袖ですが扇風機は要りませんし、夜は窓を閉めて寝ないと寒いくらいです。 カンタボンの奴は風邪を引いたらしく、38度の熱を出し、鼻をぐじゅぐじゅやっていますが、私は相変わらず好調です。カンタボンには薬をやって、家で寝ていた方が良いと言って帰しましたが、熱があっても一応やってきたのですから偉いものです。 先週の週末、JICAの調査団6人と、調整員のKさんがサバナケットにやって来ました。Kさんは引越しについて県側と話し合うために来たのですが、結局引っ越さないかわりに、来年春暑くなる前に各部屋にエアコンをつけるという事で落ち着いてしまいました。 エアコンがあれば窓を閉められるので、夜の騒ぎも多少は気にならなくなります。Kさんが来る前から引越しについてはあきらめ、エアコンというセンで納得しようとしていたのですが、あらためてKさんから、「日本から予算を削るように言われているから、事務所からはお金を出せない」と言われると、なんとなく納得できない部分が残ってしまいます。 つい他の隊員にはちゃんと家賃を払っているくせに…などと思ってしまいます。しかし、他人をうらやむ事は世の中で一番醜い事という言葉もあります。上を見ればきりが無い、下を見てもきりが無いもの。今住んでいるところも、夜の何時間かを除けば快適なのですから、良しとしましょう。 (結局私のいる間、エアコンが付く事はありませんでした) それに、引越しをあきらめた頃から生活改善を思い立ち、共同で温水シャワーの機械とテレビも購入したのです。 お湯が使えるというのはありがたいものです。なんだか汚れが一気に落ちる気がします。これで湯船があれば言う事はないのですが、それは贅沢というものでしょう。 テレビはナショナルの14型を300ドルで買い、5人で割り勘にしました。日本とは形式が違うため、8ミリビデオを繋いでも見ることができなかったのは大誤算でしたが、屋上に立っていたアンテナに繋いだらタイの放送も良く写りましたし、値段もまあお買い得だったと思います。 引越し問題はこれで一応けりがつき、後1年半センサバイで暮らす事になりそうです。ホームステイもしてみたい気もありましたが、県側の許可が下りません。せめてもう少しバラバラに住んだ方が、地元の人達と仲良くなる機会が増すかもしれないなどとも思いましたが、しかたないでしょう。 さて、JICA調査団の話に戻りますが、彼らはラオスの森林事情の調査ということでやって来ました。私の仕事とは直接関係無いのですが、土曜日に29号線をベトナム国境近くまで行くというので、Cちゃんと一緒に連れていってもらう事にしました。Cちゃんは24才好奇心旺盛で元気です。ちなみに私は36才ですが、やっぱり好奇心旺盛です。好奇心旺盛というのは、酉年の特徴なのでしょうか。 当日は、Kさん、日本語のできるボワカムさん、SAさんと森林局の職員も一緒でした。3台の車に分乗し、朝6時に出発しました。 ベトナム国境に一番近いセーポン郡までは約200km。道ガ悪いので、片道約6時間もかかりました。調査団の目的のひとつは、セーポンにある森林学校を訪ねる事。校長との話が長引き、時間がなくなり、結局国境まで行く事はできませんでした。ちょっと残念でしたが、また行く機会もあるでしょう。 話は変わりますが、最近まるで町内会の世話役のような感じです。温水シャワー機を買うときにも、テレビを買うときにも、いつのまにか私が段取りを付けお金を集める役になっていましたし、引越しの話しの時も、県の協力隊担当係のボワカムさんは、職場が近いのですぐに私のところにやって来ます。 もともとお節介ですし、世話を焼くのも嫌いじゃないのでまあ良いのですが、10人もいるとそれぞれの意見が違い、調整もたいへんです。以前こういう役はOさんがやっていたのですが、こういうことに疲れたせいもあって、すぐ近くのホテルに引っ越してしまいました。 本当は、SAさんがサバナケットの議長なのですが、引越しはセンサバイ組の問題ですし、ボワカムさんの方が私のところにやって来るのですから、私がやらざるを得ない状況なです。例によってお調子に乗らないように気を付けながら、町内会の仕事をやらせてもらうことにしましょう。 手紙を書いている間に、またボワカムさんがやって来ました。彼は6年間日本に留学していてことがあり、最期は京大の大学院にまでいた人。ここに来る以前は地方の市長までしていました。それなのに、他に日本語ができる人がいないので呼び戻され、調査団の通訳や隊員の世話と大忙しです。同情してしまいます。 朝から何事かと思えば、24日に日本から隊員の生活調査団というのが来るそうで、それまでにホテルを修理したいから一緒に来てくれと言うのです。 先に帰って鍵を開けて待っていると、農林局の人や大工さんを連れてやって来ました。中を見学して、エアコンも付けるし、吹き抜けも板でふさぎ、ディスコの音が聞こえないようにするからと言って帰りました。ラオス側もたいへんです。もしお金が無いなら無理しなくても良いのにと心配になってしまいます。 (私のいる間何一つ実行される事はありませんでした) 以前日ラオ協会の人が来た時にも思ったのですが、ラオ人は結構見栄っ張りです。その時は、調査団の人と副知事が英語で話し、その回りに農林局の各局長がいて、副知事が何か分からない事があると局長にラオ語で尋ねるという形式で行われ、私も呼ばれてそばで聞いていたのですが、笑ってしまいました。 一応各局長に尋ねるのですが、副知事が勝手に良い方に変えて英訳してしまうのです。人手が無くて調査できなかったり、お金が無くて植林できないなら、できないと正直に言ったほうが援助を受けやすいと思うのですが、つい見栄を張って、どこから出てきたのか分からない数字を上げ、ちゃんとやっていると答えてしまうのです。 この話を今回の調査団の人に伝え、気をつけるように言うと「もう1人の副知事、スカスムさんは偉いよ。分からない事は分からない、できない事はできないと言っていたよ」との事。どこにでも偉い人というのはいるものです。 ラオスのようにシンプルな国で暮らしていると、感覚も素直になるようで、ちょっとしたことで感心したり、感動したりしてしまいます。 昨日はCちゃんとチャンディー(K君)と3人で、夕食後郊外まで星を見に行きました。チャンディーは鹿児島大学の水産科出身、実習航海で天測(星で方向を知る方法)などもやっていますから星には詳しく、色々と説明してくれました。最期には流れ星を数え始め、3時間近くも星を眺めていました。 変な外国人と思われたらしく、帰ろうとしたら私服警官に呼び止められるというハプニングもありましたが、別に大事にはいたりませんでした。なんだかのんびりとした良い夜でした。 さて、またお願いしたい物があります。牛の直腸検査用の長いポリ手袋が手に入らないでしょうか。1箱100枚くらい入っているので、1箱で良いのですが、薬屋さんに聞いてみてください。こちらで買おうと思ってもありませんし、JOCVに申請しても、こういう消耗品は難しいのです。手術用の針にしても、知り合いに頼んでタイから買ってきてもらいました。 しかし、今回の手袋にしても、以前手紙で頼んだ本にしても、無ければ無いで何とかなりますから、無理に探す必要はありません。見つからなくても気にしないでください。 そういえば先週時蔵が、雑誌と落語のテープを送ってくれました。ラオスで聞く落語というのもなかなかオツなもの。つい話し方が落語っぽくなったりします。チャンディーに貸してやったら気に入ったらしく、この前麻雀をやった時には2人で落語の口調を真似て笑っていました。 チャンディーは高松出身。ずっと剣道一筋の少年時代を過ごしたせいか、本当にまっすぐに育った良い奴です。最近歴史小説に凝っていて、家から本を送ってもらっては読みふけっています。私が小さい時に凝った落語から得た知識を話してやると、たいへん喜びます。何でも役に立つものです。 もし時蔵が来たらお礼を言っておいてください。もちろん手紙も書きますけど。 今日はこのへんでやめておきますか。お元気で。 お後がよろしいようで…。 |