タートイハン

1993-06-15

 元気ですか。手紙はちゃんと届いていますか。

 先々週は皆に出す手紙の製作でけっこう忙しく、先週の初めはそれを出すのに時間がかかり、なんとなく暇がつぶれて良かったのですが、出したあと少し後悔してしまいました。

 テレビもなく、酒も日本にいる時ほど飲んでいないので、夜わりと暇があるのです。一度に全員に出さず、少しずつこつこつと書けば良かったのでは、と思ってしまいました。一度に出すと一度に返事が来る可能性もあります。でも同じ日に返事が来るわけもなく、あまり返事が来る内容ではないので、心配する事はないかもしれません。

 仕事の方は相変わらず暇です。一日一匹犬が来るくらいなのですが、こちらの人は注射の打ち方がいいかげんで、犬が恐れて鳴きわめきます。あまりにもひどいので、私がやると言い注射すると、一声も鳴かずにあっさりと終わりました。痛い場所と痛くない場所が分かっていないのです

 その後職場の人に注射のやり方を説明すると、非常に感心してくれました。そんな事が一回あっただけで、仕事のできる奴という事になってしまいました。

 そんな日常の仕事とは別に、前の手紙に入れたコピーのような事件があり、ラオスの将来を考えると、ある程度はラオ語による専門用語が必要なのではないかと考え始めています。誰もやらないのなら私がやるしかないのではないかと思い始め、その用語集を作る事を2年間の仕事のひとつにしようかと思っています。

 本当はこういう仕事にこそパソコンやワ-プロなどが有効なのでしょうが、もちろん職場にはありませんし、わざわざ送ってもらうのも大変なので、昔ながらのやり方でやる事にしました。

 単語カードを作り、一語一語を書き入れ、それを最後に並べ替えて清書する計画です。かなりの根気と時間が必要だと思いますが、暇だけはありますので何とか形にしたいものだと思っています。

 今日の昼その単語カードを作るために市場に買い物に行きましたが、もちろんそんな専用カードは売っていませんし、少し厚手の画用紙のような紙さえ売っていないのです。何軒かで聞きましたが、タイでしか売っていないと言うのです。

 結局、ホテルの近くのタイ雑貨を置いてある店で子供用のお絵描き帖を見つけ、午後はそれを切って単語カード作りをしていました。

 もうひとつ職場での話題ですが、先週の月曜からカンタボンという23才の男の子に日本語を教えています。彼は23才にもなるのに、まだ男の子という感じで、家がお金持ちらしく、良い靴や、洋服なども良さそうなものを着ています。そのカンタボンに完全になつかれてしまい、まるで犬コロのように私のそばにへばりついて離れないのです。

 もっともラオスは村社会で、職場や町の人たちも一度知り合いになると必ず一言二言声を掛け合いますし、男の子は男の子同士、女の子は女の子同士非常に仲が良く、男同士でも手をつないで歩いているようなところですから、しょうがないのかもしれませんが、彼の場合、私のどこが気に入ったのかわかりませんが、まるで悪女の深情けのようです。

 私が煙草を吸うからといって自分も吸い始めたり、ちょっと水が飲みたいそぶりを見せるとすぐ持って来たりと大変な尽くしようです。深刻な顔をして相談があるというので何かと思えば、どんな靴を買ったら良いかという相談だったりもします。

 13日(日)には彼の誘いを断りきれず、彼のバイクでここから12Kmほど離れたタートイハンという搭へ行ってきました。はじめ彼は車も持っていると言っていたので(ウソでしたが)、「じゃあS君も誘って3人で行こう」と言うと、何だかんだ理由をつけて二人のほうが良いと言うのです。結局二人で行く事になり、私が搭のスケッチをしている間も飲み物を買いに行ったりしてくれました。

 こう書いてみるとまるでホモに誘われているかのようですが、そういうおかしなところはなく、彼の友達の何人かにも会いましたが(彼の生まれた村がタートイハンの近くだったのです)別にそれらしい様子もないので、子分ができたと思い少し付き合ってみる事にしました。

 Sさん(29才助産婦。今までサバナケットには医療関係の隊員は彼女だけで仕事の話をしても誰にも分かってもらえなかったようです。今回私が来て少しは病気の話などができる人が来たと思ったのか、良く職場に来て話をしていきます。医療関係の隊員は本当に大変そうです。日本との落差で悩むらしいのです。なにしろ病気になった時、病院に行ったら本当に病気になるから行かないというほど汚いらしいのです)の話でも、ラオ人は本当に人懐っこいから、もし遊びにこいと言おうものなら、それこそ毎日やってくるとの事。

 カンタボンもホテルに遊びに来たがっているので、何と言おうか悩んでいます。もう少し子供か、女の子に好かれるなら良いのですが、いい年をした男に好かれると対処に困ってしまいます。しかし、彼のおかげで少しラオ語の会話が上達したような気がします。

 そんな彼や、職場の人達、お店のおばさん達など、だんだんと顔見知りが増え、旅行ではなく生活になってきています。

 土日はプールやテニスなどの楽しみもあり、一応2年間の仕事の目標らしきものもでき、毎日元気に暮らしています。

 ではまた、お元気で。

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