早朝托鉢に回る僧

1994-08-21

 元気ですか。よくまあ毎週手紙が書けるものだと、最近我ながら感心しています。でも、この手紙を書くということが、一つの節目になっているような気もします。やはり、何か節目になることが無いと、ただダラダラと時が過ぎていくものなのかもしれません。そして、後20日ほどで、大きな節目である任国外旅行がやってきます。

 さて、私は今、大変気分の良いひとときを味わっています。この1週間ずっとやっていたことが、やっとひとつの形になったのです。と言っても、以前手紙に書いた『メコン』のことではありません。写真で見る細菌学の本みたいなものを作り上げたのです。この1週間これにかかりっきりで、本当に朝から晩までやっていてのです。なぜこんなものを突然作ることになったかと言うと、またいつもの安請け合いから事が始まったのです。

 先週の土曜日、死亡した牛の血を持って来た人がいました。どうして死んだのか調べて欲しいと言うのです。さっそく染色し、本を見ながら確認していると、職場の皆が集まってきて、自分たちもそういう本が欲しいと言うのです。

 「じゃあ、コピーしてあげるよ」と、気安く言ってしまったのが事の始まりでした。

 いざコピーしようと思って考えてみると、日本語の本をそのままコピーしても意味のないことに気づいたのです。さてそれからが大変です。本に載っている写真をコピーして切り貼りし、それにいちいちラオ語の説明をつけなければいけません。

 どうせ作るならパソコンできれいに作ろうと思い、朝は8時半から昼休みを挟んで夕方まで、夜もOさんに頼んで鍵を開けてもらい、8時から10時まで、毎日農林局のパソコン室に通い、ラオ語と英語を打ちつづけました。

 細菌学だけなら2・3日で終わったのですが、途中で欲が出て、どうせ作るならウイルスと寄生虫もと思ったのが間違いの元、結局この1週間ずっとそんな生活をする羽目になってしまいました。

 だからといって毎日の診療がなくなるわけではなく、そちらにも行かなくてはいけません。幸い一時より暇になったので助かりましたが、キーボードに向かう合間に往診という、結構ハードな日々でした。

 昨日、土曜日も一日中キーボードを打ち続け、やっと打ち込みを終わりました。今日は昼から家で切り貼りを始め、やっと原稿が完成したところなのです。結局30ページくらいの小冊子になりました。明日これを手直しし、コピーして完成です。

《この頃は、まだWindows3.2の時代だったのです。今ならスキャナーで取り込んでもっときれいにできたのでしょうが…。パソコンの進歩って本当に早いですね》

 できてみると結構まとまっているので、多めに作って農学校の生徒などにもあげようかなと思っています。きっと役に立ってくれることでしょう。いつか送ってもらった細菌学の本も、こうして役立ったわけです。

 そんなわけで、旅行前にやってしまおうと思った仕事のうち、辞書作りは遅れてしまいました。『メコン』の方はほぼ完成し、後は原稿待ちですし、機材申請の書類は送りました。これであと辞書さえ完成すれば、気分良く旅行に行けます。やはり、大きな節目を前にすると、仕事をしようという気になるものです。残り20日間は、辞書作りにかかりっきりになる予定です。

 旅行から帰ったら、出来上がった冊子と辞書を持って、農学校に教えに行きたいとも思っています。

 今回はいつもより短めですが、疲れているのでこれで終わりにします。

 それではまた、お元気で。

 

●いつのまにか誕生日が過ぎてしまいました。

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