メコンの夕暮れ

 夕日が沈むにつれて、普段はどんよりとした色のメコン川がキラキラと輝き始めます。やがてオレンジ色の一筋の光が、夕日の沈む対岸のタイと、こちら岸のラオスを結びます。まるで光でできた橋のようです。

 しだいにその光は消えていき、今度は空が茜色に染まります。だんだん周囲は暗さを増していきます。夕日が沈みきってからも、まるで名残を惜しむかのように、残光がサーチライトのように何条かの筋を作ります。やがてそれも消え、薄明かりだけが残ります。

 目を天上に転じると、今度は星たちの時間です。ホコリっぽい街なのですが、それでも日本では見られないくらいの星の数です。日本とは違って、北極星は地平線に近く、オリオン座が頭上近くに見えます。

 もう一度メコン川のほうを見ると、すっかり空も暗くなり、対岸の町ムクダハンの町明かりが、メコン川の水面にうつります。ラオスにはない、大きな赤いネオンも見えます。気づくともう夜。

 こうして1日が終わっていきます。

 

1993-11-28

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