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サバナケットに生きる サバナケットに行ったことのある協力隊員なら一度は入ったことのある、サバナケット名物のベトナム料理屋。そのベトナム屋のおばちゃんへのインタビューです。 母さんかい(おばちゃんは自分のことをこう呼びます)、母さんの名前はフォン。年は57歳。生まれたのはビエンチャン(ラオスの首都)さ。血液型？そんなのはわからないけど、ベトナム人はＯ型が多いって言うから、そうかもしれないね。 両親はハノイ生まれ。母さんの父親って人は裁判官でね、1945年の第二次世界大戦が終わったときにタイに移り住んだのさ。ベトナムに行ったのは、五つの時に一回行ったきりだね。もしまたベトナムに行けるなら、ハノイに行ってみたいね。 母さんがラオスに来たのは1989年だから、48年間タイに住んでいたってわけさ。兄弟は二人。兄は医者、弟は商人さ。二人とも今もまだタイに住んでいるよ。小さいころ、母さんの家は結構金持ちでね、女中さんもいたから、母さんの母親は料理なんてしたことなかったね。 今母さんが作っている料理かい？これは35歳くらいの時に、タイの料理学校に18ヶ月通って覚えたものさ。だからこれはタイ料理なんだよ。(意外な事実が判明しました。いつもベトナム料理を食べていたつもりだったのに…) 結婚したのは25歳の頃。相手は当時洋服の仕立て屋をやってた人さ。どちらから結婚を申し込んだかって？もちろんあっちさ。ベトナムの女は働き者でなんでも出来るけど、そういう事は普通男の仕事だよ。いっぱい持参金を持って、母さんを迎えに来たものさ。タイに住んでたから、普段は着たことのなかったアオザイも、結婚式の時には着たっけ…。 その旦那も去年死んじまったけどね。どうして死んだかって？お酒の飲みすぎさ。 子供は二人。息子一人、娘一人さ。父親と同じ仕立て屋をやっていた息子は、31歳のときに死んじまってね…(と、顔を曇らせた)。でも娘の方は結婚して孫を産んで、今は近くに住んで店を手伝ってくれているんだから、幸せさ。 タイにいた時は、バンコク、スラータニー、ナコンラシーマ、ムクダハンといろいろ移り住んだね。一番長くいたのは、ムクダハン。この娘が生まれたのもムクダハンさ。母さんは店を持っていてね、洋服や、薬や、色々な物を売っていたのさ。ところが、悪いタイ人にだまされて一文無しになっちゃってね、それでまあ、ラオスに来たってわけさ。 ラオスに来たのは1989年。来た時は密入国で、手には500キープ(当時約100円)しかなかったね。揺れる船底で、まだ3ヶ月だったこの孫を抱いていたものさ。こっちに来てすぐにこの店をはじめたんだけど、何しろお金がなくてね。食器もほとんどなかったし、椅子もなく、机3っつしかなかったっけ。でも今はこうやって皆を食わせているんだから、たいしたものさ。 ラオスの他の町には行った事がないけど、ここはとても良いとこさ。ここの人は人も良いし、正直だし、車が少ないっていうのも良いね。この町にはベトナム人が多いしね。ベトナム人学校もあるし、領事館もあるし。中国人よりベトナム人のほうが大勢いるよ。え、この子かい？(と孫を見て)もちろんベトナム語も話せるよ。 ベトナム人の女の人はなぜスタイルが良いかだって？そうでもないと思うけど…もしそう思うのなら、それは自然のものさ。別にきれいになるための特別料理っていうのはないよ。 ベトナム戦争のときはタイにいて、店をやって儲けたお金を、北ベトナムに援助資金として送っていたね。(他のおばちゃんを呼び寄せて)この人は、ラオスで生まれて今ベトナムに住んでいるんだけど、戦争のときは看護婦として軍隊にいて、ラオスを助けた人なんだよ。ベトナム人は我慢強いからね。戦争の時も、3日間なんにも食べなくても大丈夫だったんだって。ベトナム人が働き者なのは、我慢強いからさ。ベトナム人の女は、徹夜で働くのも平気だし、食べなくても平気だよ。母さんだって朝5時から夜12時まで毎日働いているしね。ラオ人は怠け者、タイ人はうそつき、ベトナム人は働き者が多いけど嘘つきも多いね。ベトナム人の中にも、奥さんをひっぱたくなんて人もいるけど、本当は女のほうが強いのさ。 ホー・チ・ミンは素晴らしい人だったね。だから1975年4月、サイゴン陥落の時は嬉しかったよ。 日本人に最初に会ったのは、タイにいた時さ。母さんが子供の頃、タイに日本の軍人さんがやってきたのさ。ああいう人達は、ハラキリをするんだろ…。日本人は親切で、良い人達だと思うよ。一度日本に行ってみたいね。でも物価が高いっていうから、無理かもしれないね。 日本の有名人を知っているかだって？ちょっと待ちなよ。(と言っておばちゃんは奥に行き、アルバムを持ってきました。そこには、われわれ協力隊員や、元協力隊員たちの写真が貼ってありました) もし若返ってもう一度結婚するとしたら、なに人と結婚するかだって？う〜ん（となぜか、しばしためらった後）、やっぱりベトナム人だと思うよ。 ここの自慢料理はなにかって？そりゃ全部が自慢料理さ。（と言っておばちゃんはいつものように、ニコニコと笑いました）
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1994-11-11