公演旅行レポート

 芝居の仲間たちで、あるメーカーが募集していた「あなたの夢かなえますキャンペーンー夏の夢旅行プラン」というのに応募したら、当選してしまいました。

当選者は8月中に、提出したプランどおりの旅行をしなければならない規定がありました。

かなり迷ったのですが、お盆休みを1週間早くとることにして、行ってきました。

 

 8月6日(月) 晴れ

 東北自動車動をひたすら北上。もうすぐ長者原のサービスエリアだ。エンジンは快調。北上するに従い肌寒いほどになってくる。関東のうだるような暑さが嘘のようだ。車内は快適。隣の座席では妻が寝息を立てている。

 まだお盆休みには早いし、ちょうど新潟祭。いつもの年なら神輿を担いでいる頃だ。病院を休んでこんな旅行に来ている時ではないのだ。

 ところが、ひょんなことで応募した企画の特賞に当選し、それからあれよあれよという間に話が進み、気づいてみるとここでこうして芝居の大道具や小道具を載せたバンに乗ることになってしまったのだ。

 そのバンを運転しているのは、私も参加している「童話劇グループ 七色のスリッパ」の主催者ノリエさんの旦那、エイジさんだ。エイジさんは照明でも音響でもなんでもできる人だ。だからノリエさんはエイジさんと結婚したんじゃないかと、仲間内ではウワサしている。一種の政略結婚かもしれない?

 8時半、毎年1回定期的に公演している小学校の演劇部の子達と先生の見送りを受け市川市を出発。

 レンターで借りた10人乗りのバンの4列ある座席のひとつは荷物で埋まっている。最後部座席に座っているノリエさんという人が、この劇団のリーダーだ。「童話劇グループ 七色のスリッパ」という名は、今から20ウン年前、彼女が高校生だった時に名付けたのだと聞いている。

 私がこの劇団とかかわったのは、今から18年ほど前、大学時代の頃だ。当時私が通っていた北里大学獣医畜産学部は、青森県の十和田市という所にあった。この大学に入ると教養の1年間は神奈川県の相模原、後の5年は十和田市に住む事になるのだ。

 相模原時代に演劇にかかわった私は、十和田に来てからも演劇が出来ないかと劇団を探していた。とりあえず演劇に触れたいと思った私は八戸市民劇場に登録に行き、その時に市内の劇団の連絡先を聞いたのだ。

 リストの一番上にある電話番号に連絡し、八戸市内の喫茶店で待ち合わせた。そこにやって来たのが、エイジさんとノリエさん、そして、まだオムツの取れない娘のユカリだったのだ。それ以来この劇団にかかわる事になり、公演のたびに毎日車で1時間もかけて練習に通うことになってしまったのだ。

 この劇団の練習場は、八戸市にある「アルファ よいこの家」という、学童保育の家だった。子達と一緒に練習し、一緒の舞台に立つのというのが、この劇団のやり方だったので、そこに来ていた子供達とも何度も共演したのだ。

 あれから15年近く…。その子供達も立派に大人になっているはずだ。今回の旅行の目的のひとつは「アルファ よいこの家」で、大人になった当時の子供達と同窓会(?)をする事なのだ。

 私が5年生の時に主催者夫婦が仕事の都合で転勤し、一度活動は終了した。ところが、今から10年ほど前にその夫婦が千葉県の市川市に引っ越して来たために活動が再開し、新しい仲間も増え、今でも1年に一度は市川市の小学校で公演しているのだ。

 後部座席には、ノリエさんと並んで、トミちゃん、カズミちゃん、助手席にはノリエさんの息子のリュウジが乗っている。

 トミちゃんは、普通の主婦(?)。市川市の小学校で、子供がノリエさんの子供と同級生だったため、いつのまにかこの劇団の一員になってしまった。去年、旦那さんの転勤で、今は神戸。新幹線でこの旅行のために駆けつけて来たのだ。

 カズミちゃんも、市川市在住の普通の主婦。トミちゃんと同じケースで、この劇団にかかわるようになったのだ。トミちゃんとカズミちゃんは、東北に行くのが始めてなので、朝からウキウキしている。

 ノリエさんの息子のリュウジは中学2年生。こういう環境で育った影響で、子役の仕事で活躍中だ。20才になる姉のユカリも、明日の朝には長距離バスで駆けつける。

 長者原インターで30分ほど待つと、もう一台の車が追いついて来た。運転しているのはガッちゃん。奥さんのアキカちゃん、娘のサキちゃん、ハナちゃんも一緒だ。ガッちゃんは私よりちょっと年下なんだけど大学の同級生。今は川崎で動物病院を開業している。3年生の時に公演をやる事になり、役者が足りなかったので、人形劇部を引退して芝居に興味がありそうな彼を誘ったのだ。

 八戸で活動していた頃には高校生だったヨーイチも、今は東京ので働いている。明日新花巻駅で合流する予定だ。今回の芝居の台本も一部はヨーイチの作品だ。

 十和田市在住で、芝居の中の歌を作曲している、タケガハラさんも明日の公演では手品を披露してくれるらしい。

 バンの2列目の座席に積んだ荷物の一番上から、龍の人形がこちらを見つめている。今回来られなかったガッちゃんの人形劇部の後輩、クマちゃんが作った物だ。去年の公演「龍の子太郎」で使ったのだ。

 高速を降り新花巻駅へ。新幹線でやって来たヨーイチと合流し、宮沢賢治童話村へ下見に行った。9日にここで公演する予定なのだ。閉館時間間際にもかかわらず、親切な館長さんの好意で舞台を使って練習する事が出来た。賢治ゆかりの露須地人館を見学後、再び高速。

 午後9時。小岩井農場のSLホテル到着。賞品で貰ったクオカードでガソリンを入れようとしたら、使えるスタンドがなかなか見つからず、探し回ったため手間取ってしまったのだ。(このカードには悩まされた。結局十和田市でも八戸市でも使えるところはなかったのだ)

 風呂は10時までなので、急いででバーベキューの夕食後、入浴。寝台車を改造した部屋に戻って、すぐに寝てしまった。

 

8月7日(火) 晴れ時々曇り

 牧場の朝。澄んだ空気が心地よい。朝早くやって来たユカリも合流。小岩井農場で少し遊び、9時半出発。十和田湖畔の乙女の像前で記念撮影。奥入瀬渓流を足早に散策し、公演時間の1時ぎりぎりに十和田湖町立図書館に到着した。

 演目は、人形劇の「ぶたのたね」、私のギターを伴奏にリュウジのタップダンス、そして15年前に八戸公民館でやった事のある「龍の子太郎」だ。観客は約30人。

 公演後すぐ移動。作曲担当のTさんの子供が通っている、十和田市内の「めぐみ保育園」での公演。

 「ぶたのたね」、タップの後、タケガハラさんの手品。大ウケだった。お父さんがこれだけウケると、娘さんも鼻が高い事だろう。その後「龍の子太郎」でフィナーレ。フィナーレの後ペンシルバルーンで動物を作って配った。子供達たちは喜んでくれたようだ。

 ここで、仕事のあるヨーイチとはお別れ。人が減っていくのは少し寂しいものだ。

 7時には「よいこの家」に着き、同窓会の予定だったのに、アクシデント。保育園の子供達と遊びすぎたのと、ノリエさんが体調を崩し休憩したため、予定時間を大幅にオーバー。到着したのは8時半だった。

 集合時間に遅れたにもかかわらず、みんな暖かく出迎えてくれた。みんな、ごめんね。

 「よいこの家」のハシモトおばさん、オオクボおばさん、ハシモトおばさんの息子のシンくん。八戸でやっていた時の仲間、チエコちゃん、イクちゃん、チャコ(明日の公演に出演予定)、タケガハラさん、美術担当だったイタガキくんもやって来た。

 当時小学生だった、ジュウロウ、エリコちゃんとタケの姉弟、、トシコちゃん、ユキコちゃん、ユキちゃん、が集まっていた。ジュウロウのお母さんやヒロミちゃんのお母さんまでやって来た。子供のいる子(もう立派な大人なんだから子はおかしいけど)は、子連れでやって来ていた。大人になった子供達(?)とは15年ぶりの再開だ。すぐに顔が思い浮かばない子(?)もいたけど、連れて来た子供の顔を見みると、逆に当時子供だった頃の顔がよみがえった。

 ジュウロウの娘は、今日来られなかった妹のサナエの子供時代にそっくりだった。

 いつも私やガッちゃんにまとわり付いて来た、ちょとおませだったエリコちゃん。そのエリコちゃんの娘は、ジュウロウが気に入ったらしく、ずっとジュウロウにまとわりついていた。昔のエリコちゃんを思い出してしまった。

 小さかったタケ。芝居の中でタケを着物の中に隠しておき、突然飛び出てくるシーンがあったけど、小さいから誰も子供をおぶっている事に気づかず、タケが突然飛び出た時には大ウケだったっけ…。

 頑張っていたユキコちゃん。しっかり者のトシコちゃんは、今銀行員。ユキちゃんはたったひとつしかないセリフを「よいこの家」の片隅で一生懸命に練習していた…。

 最初はお互い戸惑いがあったが、いつのまにか当時のように、私やガッちゃんのまわりに当時の子供達が輪になり、思い出話に花が咲いた。

最高の夜だった!

八戸市内の厚生年金休養センター泊。

 

8月8日(水) 晴れ時々曇り

 朝から温泉に入り疲れを取る。

 ジュウロウのお母さんがやっている喫茶店「アンダルシア」で朝食。10時、八戸中央図書館で公演。先着100名の予定が170人。

 もともと八戸発祥の劇団なので、凱旋公演とも言える。今回用意した演目全てをやる。「どんぐりとやまねこ」、「ぶたのたね」、タップ、手品、「龍の子太郎」。

 当時のメンバー、チャコも参加。15年前にやった「龍の子太郎」の振り付けを覚えていたのは、さすがだった。タケガハラさんも十和田市から駆けつけた。事前に市の広報に告知してもらったため、地元紙も取材に来ていた。

 公演終了後、ウミネコの群生地蕪島へ。ここで、音響やバルーン作りで頑張ってくれたユカリと分かれた。

 リアス式海岸に広がる草原が美しい種差海岸で昼食。日本三第鍾乳洞のひとつ龍泉洞に寄り、盛岡へ。わんこそばに挑戦した。旅の疲れのせいか、元気なのは中学生のリュージだけ。最初は皆わんこ挑戦を嫌がっていたくせに、結局、皆が挑戦する事になった。

 わんこ15杯でかけそば一杯分。男性の平均は60杯、女性の平均は40杯と、店のお姉ちゃんは挑発する。皆それぞれ、おなか一杯食べた。エイジさんは60杯、ガッちゃんは65杯、リュージの105杯は若さの証だろう。始め嫌がっていた妻も、あまりやりたくなかったトミちゃんや乗り気だったカズミちゃんや、ちょっと体調を崩していて43杯だった私までも抜き、女性部門1位の45杯だった。ちなみにそばの苦手なノリエさんは玉子丼だった。

 店のお姉ちゃんの「ハイ、ど〜んどん!」「ハイ、じゃ〜んじゃん!」「ハイ、がんばって!」という独特なイントネーションの掛け声は今でも耳に残っている。

 花巻のフォルクローロ花巻泊。到着が10時を過ぎたために温泉に入れなかった。残念。

 

8月9日(木) 曇り時々雨

 10時、宮沢賢治童話村の野外ステージにて公演。「ぶたのたね」、タップ、そして賢治の作品「どんぐりとやまねこ」上演。雨のため観客は童話村のスッタッフの子供と親子連れ一組。小雨に濡れながらの上演となった。観客は少なかったけど、賢治ゆかりの地で賢治の作品を出来ただけで満足した。たった二人の子供達の反応も心地よかった。

 日常生活を離れ、役者として過ごした4日間もこれで終了。白石サービスエリアで昼食をとり、アキカちゃんの実家の山形に寄るというガッちゃん達と分かれた。

 大宮駅で降ろしてもらい、2・3日実家に行くという妻と別れ、新幹線で新潟へ。新潟駅を降りると、新潟祭の最終日を飾る花火が出迎えてくれた。

 

2001-08-12

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