飼い主を決めた仔猫

 先週の出来事です。夜隣の駐車場から、仔猫の鳴き声が聞こえてきました。

気になって見に行くと、警戒しているのか、ぴたっと鳴きやみます。家に戻ると、また鳴き声が聞こえてきます。

何度か見に行きましたが、結局どこにいるのかわかりませんでした。

 次の日、診療中にまた仔猫の鳴き声が聞こえてきました。窓越しに見ていると、グレーの1ヶ月くらいの仔猫が、隣の駐車場の隅にある植え込みからちょこちょこと出てきました。

そして、うちの前に停めてあった犬の飼い主さんの車の下に入り込んでしまったのです。飼い主さんのお嬢さんが車の下から抱き上げ、待合室につれて来ました。

『このまま飼ってくれないかな』という気持ちと、『結局うちで飼い主を探すことになるのかな』 という気持ちが交差しました。

相談の結果、親猫が迎えに来るかもしれないので元のところに戻し、夕方まで来なかったらうちで何とかすることになりました。

 それからも気になるので何度か見に行きましたが、ポカポカと暖かい日だったので、仔猫は植え込みの陰で気持ち良さそうに寝ていました。

 突然仔猫の甘えるような声が聞こえました。

窓越しに見ると、ニャーニャー鳴きながら、道の向かい側を通りかかったベビーカーを押している若いお母さんのところへ、トコトコと駆け寄って行きました。

猫好きの人にとっては、たまらないほどのかわいさです。その人もたまらず抱き上げ、そのまま拾っていってくれました。

 それまでも何人もの人が通りかかったのに、どうしてその人に決めたのでしょうか。仔猫自身が飼い主を決めた基準はなんだったのでしょうか。

いずれにせよ、母性本能をくすぐるうまい作戦でした。

 

2000-06-06

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