狂犬病について おはようございます。 今日で私の担当は終わります。半年間ありがとうございました。 はじめにこの『朝の随想』を引き受けた時には知らなかったのですが、意外と回りに放送を聞いている人が多いことに驚かされました。思わぬところで思わぬ人に「ラジオ聞いていますよ」と言われたりしました。 咄嗟の事でうまく返事が出来ず、「どうも…すみません」などと謝る必要はないのに謝ってしまう事もたびたびでした。 「獣医さんなのに動物の話じゃないんですね」とも言われました。 25回の放送のうち半分はホームページ未収録の新しい話で、全体の半分は動物に関係する話題というのが目標だったのですが、少し動物関係の話が少なかったのかもしれません。 最後くらいは獣医らしく動物に関係した話題にしようと思います。 来月4月は獣医師にとって重要な仕事のひとつ、犬の狂犬病集合注射の季節です。 日本では50年近く狂犬病の発生報告はありませんが、飼い犬への狂犬病予防注射は飼い主の義務とされています。 狂犬病は犬だけではなく哺乳類全部に伝染する病気です。狂犬病に感染した動物が他の動物に噛み付き、唾液腺で増殖したウィルスが血液中に入ることなどで感染します。 潜伏期間は非常に長く、小動物でも2週間から数カ月です。ヒトでは1〜3カ月がもっとも多いとされていますが、3年以上という例もあります。 狂犬病の犬に噛まれたからといって必ず狂犬病になるというわけではありませんが、発病した場合には100%死亡する恐ろしい病気です。 狂犬病の症状は筋肉の反射亢進や痙攣で、水さえ飲み込めなくなります。訳が分からず叫びながら暴れ、最後には呼吸中枢が侵されて死亡します。発病を防ぐにはワクチン以外の方法はありません。 世界的に見ると狂犬病の発生がない国のほうが珍しく、オーストラリア、ニュージーランド、北欧三国などの小数の国々と、日本、台湾、シンガポールなどの島国や、グアム、ハワイなどの小さい島々だけです。 BSEや鳥インフルエンザのように外国から入ってくる伝染病も多くなっています。新潟のような港町は、外国の船も寄港しますから特に注意が必要です。 ずいぶん脅かしてしまいましたが、狂犬病の原因や治療法ははっきりしています。狂犬病の犬に噛まれた場合でも、その後の治療さえしっかりとやれば発病する事はありません。 また現在の日本のように、野良犬がほとんどいない状態では、たとえ狂犬病が入ってきても広範囲に流行する可能性は低いといえるかもしれません。 海外旅行に行った時には必要以上に動物に近寄らないようにしましょう。もし噛まれた時には石鹸を使って流水で洗浄するか、アルコールで消毒する事で感染の確率を抑える事が出来ます。日本大使館に連絡すれば、治療用のワクチン接種についても教えてくれるはずです。 海外では現在でも狂犬病は恐ろしい病気の一つであり、日本に入ってくる可能性はゼロではないというのも事実です。 私も協力隊でラオスに行っていたときに治療していた犬が死亡し、後で原因が狂犬病だったことが分かり、死の恐怖を覚えた事があります。 犬を飼うならば、せめて狂犬病の予防注射くらいはうってやってください。獣医の仕事というのは、犬に噛まれる可能性がとても高い仕事なのです。よろしくお願いします! |
2006-03-31