ののちゃん おはようございます。 ある日の出来事です。 もうすぐ病院が終わる7時過ぎ。最後の患者さんを診察していると、中学生の女の子が二人、息を切らして病院に飛び込んで来ました。 「大変です。猫が口からいっぱい血を流して倒れています。すぐ来てください」 どうやら車にはねられた猫が、病院から二町内ほど離れた路上に倒れているようです。でもまだ診療時間なので、病院から離れるわけにはいきません。ダンボール箱を渡し、何とか病院まで連れて来てくれるように言いました。 最後の患者さんの診察を終え、もうそろそろ来るころだろうと待っているのになかなかやって来ません。 「先生。私自転車なので、ちょっと行って見て来ます」 そう言って、うちの看護婦さんが飛び出して行きました。 酸素吸入や薬の用意をし、受入れ態勢を作って待っていましたが、なかなか帰ってきません。ゆっくり歩いても5分もかからないはずです。 しばらくすると、彼女は箱を抱えた中学生二人を連れて帰ってきました。 残念ながら猫はもう息がありませんでした。翌日ペット霊園に送ることを説明し、中学生を帰しました。 彼女がマウンテンバイクで現場に乗りつけた時、何人かの人達が集まっていたのですが、あまりにも猫が血だらけなので誰も手を出そうとしなかったのだそうです。でも中学生の、「あ、動物病院のお姉さんだ。来てくれたんだね」 という声に励まされ、猫を箱に入れ、路上を水で洗い流して帰ってきたのだそうです。 「ちょっと我ながらかっこ良かったと思いますよ」 結果的には猫は助からなかったのですが、そう言いながら帰っていった彼女の顔は充実感にあふれていました。 別の日の出来事です。 生後3ヶ月くらいの子猫だったののちゃんが交通事故に遭ったのは、ある大雨の日でした。轢いたのは小さな二人の子供のお母さんでした。雨のために視界が悪く、野良猫だったののちゃんを車で轢いてしまったのです。 後足を骨折していましたが、まだ小さすぎて手術も出来ませんし、どんどん大きくなる時期なのでギブスで固定することも出来ません。テープで固定して、元気になるまでそこのお家で面倒を見ることになりました。 ののちゃんは、みるみるうちに元気になり、普通の猫と同じように歩けるようになりました。 アパートなので猫は飼えないとの事でしたが、結局ののちゃんはその家の家族の一員になりました。ののちゃんはほとんど鳴かない子で、とても素直な、物の分かったかしこい猫だったのです。 うちに診察に来る時は、3才くらいの女の子が抱いてきました。抱くというよりぶら下げて来るといった感じだったのですが、ののちゃんはおとなしくしていました。 5才くらいのお兄ちゃんは、犬も欲しくなったらしくお母さんに「ママ、今度は子犬を轢いてね!」と言ったのだそうです。 それを聞いたお母さんはどのように答えてよいのか大変困ってしまったということです。 |
2006-03-10