アリチョークと豚の手術

 

 おはようございます。

 

協力隊員として2年間暮らしたラオスでの出来事です。

 

 ラオスの食堂に入ると必ずテーブルの脚の下にお皿が敷いてあり、そこに少量の水が入れてありました。初めはどうしてそんなものが置いてあるのか分かりませんでした。何か宗教的なものなのかと思っていましたが、しばらくしてその理由が分かりました。アリがテーブルに上がらないようにするために置いてあったのです。

 

 あちらのアリは食べ物があると、どこからともなくあっという間にやって来ます。私が住んでいた部屋は3階にあったのですが、食べ物を置いておくと、いつの間にかアリに食べ尽くされたりしていました。

 

 食べ物は食堂のテーブルと同じように、水を張った鍋の真ん中に缶を置きその上の皿に食べ物を置くという方法でアリを防ぐことが出来ました。

 

 困ったのは寝る時です。日本のアリと違って、すぐに噛み付きます。ベッド上にも平気で上がってきます。寝ているうちに目蓋を噛まれ、翌朝起きると目蓋が腫れ上がっていた事もありました。

 

 職場の人に相談すると、良いものを教えてくれました。市場で売っている中国製のアリチョークです。本当の名前は他にあるのでしょうが、皆アリチョークと言っていました。

 

 外見は黒板に字を書くチョークと同じなのですが、強力な殺虫剤が入っているらしく、このチョークで線を引くとアリはその線を越えられなくなり、無理に越えようとするアリは死んでしまうのです。チョークの箱にはアリではなくゴキブリの絵が書いてありましたので、本来はゴキブリ用だったのかもしれません。

 

 このチョークでベッドの足の周りに丸く線を書き、さらに部屋の壁の隙間に線を引くことでやっとアリの侵入を防ぐことが出来ました。

 

 現地で困ったことがあったら、現地の人に聞くのが一番だと思いました。

 

 豚の去勢手術に行った時にも、現地の人の知恵に驚きました。豚を飼っている郊外の農場に着いてちょっと休憩した後、「さてそろそろ手術をやるか」と言うと、農場の人たちがスコップや鍬でいきなり地面を掘り始めたのです。

 

 何が始まるのか分からず見ていると、ちょうど豚の大きさに掘った穴に、ロープで足を縛った豚を仰向けに寝かせたのです。

 

 当時の職場には局所麻酔などなかったので、どうやって手術をしようか不安でした。職場の人に言うと「大丈夫、大丈夫」としか言わないのであきれていたのですが、やっと訳が分かりました。豚は嫌がって暴れようとしましたが、穴が豚の大きさぴったりなので動くことも出来ず、無事に手術が終わりました。

 

 現地には現地のやり方があるものだと、感心してしまいました。

 

「郷に入れば郷に従え」という言葉がありますが、まったくその通りだと思った出来事でした。

 

2006-01-20

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